「確かな未来は、懐かしい風景の中にあります」(柳生 博さん)


奥びわ湖 ・ 山門水源の森は

  • 滋賀県北部の長浜市西浅井町 山門(やまかど)にあります。
  • かつては山門、中、庄の3集落の共有林で、炭や薪を作るために利用されてきた里山です。(上の荘の森
  • 1996年から県有林となっています。
  • 里山の森に囲まれて、滋賀県内最大級の湿原があり、特徴ある生態系が広がっています。
  • 面積は約63.5haあり、その中の湿原は約5.6haです。森の面積は、長浜市の森林面積の0.002パーセントにあたります。
  • 標高は、登山口で226m、守護岩(頂上部)で520mあり、その差は294mです。

水源の森100選「59 上の荘の森」(林野庁)
日本重要湿地500《生物多様性の観点から重要度の高い湿地(略称「重要湿地」)》(環境省)
◎水源涵養保安林(滋賀県)
◎ミツガシワ等生育地保護区(県条例)

◎30by30「自然共生サイト」「奧びわ湖・山門水源の森」(環境省)


自然共生サイトとは

環境省では、ネイチャーポジティブの実現に向けた取組の一つとして、企業の森や里地里山、都市の緑地など「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する取組を2023年度(令和5)から開始しました。

4月から申請受付をし、 有識者審査を経た結果、 この度、初めての環境大臣認定を122か所(35都道府県)にて行う ことが決定しました。今回認定が決定した122か所の合計面積は約7.7万haであり、これは国土の約0.2%、東京23区を超える大きさになります。

今後、保護地域との重複を除いた区域を、OECM(other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)として国際データベースに登録することを予定しています。

(環境省2023年度前期「自然共生サイト」認定結果について)より

どんなところ?

 1960年代まで生産されていた炭は京阪神に出荷され、この地域の生活を支えてきました。その当時は森もよく手入れされていましたが、その後森は放置され、里山としての環境は失われていました。

 

 「山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会」を中心に保全や復元が進められていますが、シカやイノシシなどによる獣害が深刻で、対策に追われています。


地理・気候の特徴

  • 日本海に近く、冬は北陸型の気候で、2mを越す積雪がある年もあります。
  • 太平洋、瀬戸内海にも近く、盆地型の地形で、夏は暑く多湿です。

 このような気候を反映して、寒地性と暖地性の植物が多様な植生を作っています。代表的な例として、寒い気候を好むブナと暖かい気候を好むアカガシとが枝を交わして同居している姿が見られます。(左の写真:上はブナ、下半分はアカガシ)このような多様な植生は、さまざまな昆虫や動物たちの命をも支えています。また、森に囲まれるようにして大きな湿原があり、多くの湿生の植物や水生昆虫、両生類などが生息し、生態系を一層豊かにしています。


山門湿原の特徴

  • 湿原は地震による断層活動で形ができ、起源は約4万年前にさかのぼります。
  • ミズゴケが堆積した泥炭層からなり、強い酸性と貧栄養の湿原で、氷河期から生きるミツガシワ(下写真)をはじめとして、クサレダマ、トキソウ、サギソウなど貴重な植物の宝庫です。

 2008年、滋賀県の条例で「山門湿原ミツガシワ等生育地保護区」に指定されました。この指定は、山門湿原で湿生および水生の希少植物11種が確認され、これらの植物の存続上重要な区域であることによるものです。


保護指定対象種(11種)

クサレダマ

トキソウ

ヒメタヌキモ

ミツガシワ

アギナシ

サギソウ

セイタカハイリ

ヒツジグサ

ヒメミクリ

ヤチスギラン

ミカヅキグサ

 

滋賀県レッドデータブック2015年版カテゴリー

絶滅危機増大種
希少種
分布上重要種
その他重要種


花カレンダー(樹木)(野草)

花カレンダー(樹木)
花カレンダー(野草)

※(野草)表中の「バイカオウレン」は「キタヤマオウレン」に変更しています。

水源の森としての働き

  • 琵琶湖は、淀川水系1400万人の大切な水源です。
  • 「山門水源の森」は琵琶湖へ水を供給しています。
  • この森から流れ出る大浦川で、琵琶湖の固有種であるビワマスの産卵が盛んに行われており、水源の森として健全な保全の重要性が増しています。
  • 「こころ」や「からだ」の健康が育まれます。
ブナ林

 この森にはブナの群生地があります。ブナは水分を多く含むため建築材として利用されず,無用扱いされてきました。近年、ブナは水源をまもる木として注目されるようになり、ブナ林の保全に関心が高まっています。


2017年12月15日びわ湖放送「しがのイチオシ!」にて紹介していただきました。


2019年11月23日 びわ湖放送「滋賀と京都の Good Sign -よいきざし-」『太古の自然のつながりを未来につなぐ人々 #1』で紹介していただきました。


2021年8月18日、中日新聞で<湖東湖北 涼みスポット> (13)山門水源の森(長浜市)として紹介いただきました。